吹きすさんでいた風は一気に遮断され、温もりが停滞するように広がる。
けど、温かくなったのはコートだけのせいじゃない。
『あたし…今日誕生日なの…』
知らないから話せる。
あたしが恥だと思ってきた家族の事も。
「うん」
涙が落ち着いてゆっくり口を開いたあたしに、彼はただ「うん」とだけ言い、じっと耳を傾けていた。
下手に言葉を挟んだり、親を卑下するあたしを責めることなくただ「うん……」とだけ。
けど、温かくなったのはコートだけのせいじゃない。
『あたし…今日誕生日なの…』
知らないから話せる。
あたしが恥だと思ってきた家族の事も。
「うん」
涙が落ち着いてゆっくり口を開いたあたしに、彼はただ「うん」とだけ言い、じっと耳を傾けていた。
下手に言葉を挟んだり、親を卑下するあたしを責めることなくただ「うん……」とだけ。



