あたしがドアをノックすると、中からは短い返事があった。



彼だと分かる声で。



「何してるの。中へ入ったら」



ドアを開けると、そこへ立ちつくしたままのあたしに彼が声を掛けた。



プリントに目を落としたまま、ペンを走らせた手元を止めもしないで。





…やっぱり来たんだ、とか言わないんだ。




まるで来ることが分かっていたかのように振舞う彼に、来なければ良かったと今更思う。