【短編】甘口キャンディー




「じゃあ何か欲しいもんあんの?」


日奈を抱き寄せながらそう言った。


座ったまま日奈を抱き締めると
日奈の鎖骨がちょうと頭のあたりにあたった。




それだけでなんだか苦しくなって…


直接鎖骨の形を確かめたくなって…


さっき離したばかりの日奈の唇にもう一度触れたくなって
上条が顔を上げる。



「あたし、twinkleの飴が欲しいっ」


顔を上げた上条の視線の先に
目をキラキラさせた日奈の顔が映り…

上条が顔を歪める。




「…は?」


「駅の近くに新しくスウィーツのお店が出来たんだけど、

そこの飴が欲しいな。


お店も『twinkle』って言うんだけど
ホワイトデー用に飴出すらしいんだ。

その飴ね…」


「…飴なんかが本気で欲しいわけ?」


日奈の言葉を遮って
上条が呆れたように言葉をもらす。


そんな上条に日奈が表情を一転させた。


さっきまでのキラキラした笑顔がだんだんとなくなっていき
悲しそうに歪んだ表情で上条から視線を外した。



「…日奈?」


「上条くんのばか。


…もう教室戻る」



少し怒った様子の日奈が足早に教室を後にして…

上条は日奈の出て行ったドアを見つめるしか出来なかった。



付き合ってから7ヵ月。


日奈が怒ったのなんか初めてで…

しかもあんな些細な会話で…







…そんなに飴なんか欲しかったんかな。





どこで怒ったのかも分からない日奈の言動を思い返しているうちに
5時間目の予鈴のチャイムが響いた。


…いつもは一緒に聞いていた予鈴が

キスをしながら聞いていたチャイムが…



すごく悲しく聞こえた。




なんで怒ったのかよく分からない日奈が


さっきまで一緒にいた日奈が…




恋しくて仕方なかった。



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