日奈は本当に犬みたいに上条の後を追いかける。
背の高い上条と20センチは違う日奈は
いくら上条がゆっくり歩いても
なかなか追いつかなくて…
でも少し急いで自分を追いかけてくる日奈が可愛くて
日奈にばれないように表情を緩ませる。
肩のあたりで揺れる柔らかそうな髪も
犬みたいな真ん丸い目も
小さい体も
細い手足も
嬉しそうな笑顔も
何気ない仕草も…
日奈の全てが可愛く思えて
日奈の全てが自分を誘っている気持ちになってくる。
何もかも無垢な日奈が向けてくる笑顔は上条にとっては残酷で…
どうしようもなく高まった気持ちを放課後の部活で発散する。
そのおかげか、先週の練習試合ではほぼ完全試合だった。
「すごいねっ!
上条くんすっごくかっこよかったよっ」
学校のテニスコートで行われた試合を見に来た日奈が
人の気持ちも知らないでタオルを差し出す。
「…サンキュ」
日奈の笑顔に…
上条の気持ちが挫けそうだった。
『精神統一』
部室にあるそんな言葉の書かれた張り紙を思い出して
上条が目を閉じた。
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