「上条、昨日駅前でティッシュ配ってたってマジ?」
翌日、武田が話しかけてきた話題に
上条が顔をしかめる。
「…誰に聞いたんだよ」
「や、姉貴が言ってたから。
マジ?」
武田の姉はテニス部のため
普段から上条とは面識があった。
見られていたかと思うと
自然と眉間にシワが寄ってきて…
「…んな事するわけねぇだろ」
しかめた表情のまま答えた。
あの後、真面目にティッシュを配って
ようやくの思いで買えた飴がポケットの中でかさばる。
1600円。
ぼったくりじゃないかと思う値段だったが
『いいよ、バイト代で』
そう言う宮川に無理矢理お金を受け取らせた。
日奈へのプレゼントにお金を払わない事に
どうしても納得できなかった。
昨日のあの時まで浮かべていた日奈の笑顔が
あの瞬間に日奈が見せた悲しい表情に塗り替えられていて…
せっかく飴を買えたのに
気分はよくなかった。
すぐに日奈の教室に行って
『昨日どうしたんだよ』
そう言えばいいだけの話なのに…
つまらないプライドがそれを止める。
3月14日。
黒板に書かれた日付がやけに目に入って…
上条が深いため息をついた。
日奈どうしてるかな…
頭から離れない日奈の悲しそうな顔に…
上条が顔を歪めた。
くだらないプライドが邪魔で仕方なかった。
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