いくつか質問して、やはりそれは幻だと渉は言う。
「お湯が揺らめき、波紋の波の影がたまたまそういった形に見えただけですよ、それ」
「な、ん……、ちがっ」
「違わなくありません。天井にあるシミを人の顔と思うのと同レベルの幻です。
人間の脳は常に何かを“創りたがる”。かごめかごめを歌ってしまった怖さでより思考がナイーブになり、あなたはただ波の逆立ちを顔と視ただけにすぎませんよ」
「でも……」
「とりあえず、早く体を拭いて、浴衣着てください。風邪を……引くかどうかは知りませんが、凍えてしまいます。僕はここにいますから。ね?」
さながらトイレに一人で行けない子供をたしなめるような、まだ煮え切らない想いもあるも渉の言い分が正しく、またそこにいるならと好美は浴室にまた戻った。


