不思議少年はかく語る



赤子をあやしていた黒い母親。――決して好美は赤子を見てはいないが、歌にあの姿勢となれば、母親の理想図にも近い。あくまでも姿勢だけの話だが。


寒空の下、夜に赤子を抱いて外に出るのは誉められたことではない。常識的に考えてやはり赤子なんていなかったと思えばいい。


なんでも良かった。赤子だろうが荷物だろうが、問題はあの歌だ。


『……め……め、……の……は』


――どこかで聞いたことがあるんだよなぁ。


クイズではないが、喉に引っかかる魚の骨並みに気にかかった。


誰かが口ずさんだ歌を知っている、でも思い出せない。あと少しで出てくると自分の思考を持っていくのはよくあることだろう。


黒い母親から持っていたもの、果てに歌。連鎖みたくほいほいと『分からないから』と次々と出た疑問を蹴り、今になってようやっと『分かりそうな疑問』にたどり着いたのだから、好美は黒い母親の歌を思い返すのに専念した。