「いえ、大丈夫です。浴室はここを出て左、突き当たりを右に曲がった奥の扉です。ああ、トイレは奥の扉の前にある右手側のとこですから」
では、と渉が行こうとしたところで好美が止めた。
「あの、さ……。本当に一人暮らしなの?」
同じ質問の答えなど同じに決まっているが、あんなことがあった手前、聞かずにいられなかった。
渉とて、二度も聞くとは“知ったか”という具合で、さして気にせず。
「一人暮らしですよ。ですが独り暮らしであるかと言われたら違いますと答えます」
「は?」
「特にあなたに危害はありませんよ」
なぞなぞを残し、そうして好美が一番聞きたい身の安全が保証された。
腑に落ちないもやもやがあるが、渉には信じさせる何かがある。
形でないから曖昧なのだろうけど、好美には確実に芽生えた安心感があった。


