浅葱色の羽織…… もちろん姫芽の頭にそんな単語は浮かばなかったのだが、初めて見る色に目を見開いた。 瞬間、突然の突風。 美しく咲いていた桜も風に揺れ、散る姿を見せる。 一日の疲れと混乱でか、姫芽は意識を手放し、桜と散るように倒れ込んだ。 最後に長い黒髪がふわりと浮く。 まだ舞う桜の花びらが、姫芽の姿を美しく映した。 「綺麗……」 男は思わず呟いた。 満月が赤く染まる桜の木の下で。