あまりにも突飛で、しかも事実か否かも定かじゃないことに、2人を巻き込みたくないのも本音。話したところで、安直に信じてもらえるかも微妙な気がする。

所詮あたしは1人なんだと不意に思い、少し悲しくなった。

そんなことを思い過ごした数十秒後、さっきと同様、かちゃり、とドアが開く音がした。一応ノックくらいしてよ、と紡ぎかけた言葉は、入ってきた人物の見事なまでのアタックにより、言葉になることなく消え失せる。


「うわっ。 つーか、普通に痛いから。離れて藍香。」

「みーなーぎー。何で学校来ないのよ!美凪いないと私、つまらないんだけどっ!」


あたしに抱き着いたまま、噛み合わない会話を交わす藍香。その様子を見て笑みを零しながら、ゆっくりと部屋に入ってきたもう1人の人物に、あたしは助けてと訴える。


「理人ー。早く藍香を離してー。」

「おはよう、美凪。…にしても、藍香と美凪は相変わらずだね。」


けれどこちらの会話も噛み合わないまま。
理人のことだから、わざとやってるのはわかるけれど。いつまでものしかかり続ける藍香を支えているのはさすがにつらくて、そのまま椅子に腰掛けた。