『こんばんは』 ありきたりなあいさつをすませて、 あたしから1メートルくらい離れてタクさんはベンチに座る。 そして淡い期待とたくさんの不安でいっぱいの私に、 タクさんが放った言葉で、 あたしの思考は停止した。 『オレがすきなのはシオリだけだって気づいたんだ。美生ちゃんとのこと考えて、おかげで気づけたんだ。 だから…美生ちゃんとはつきあえない』 遠くで、 学生たちのにぎやかな声が聞こえた。 その中の誰かが、 いや、私の中の私が、 『ざまーみろ』と言ったのが聞こえた気がした。