I wanna be your only lover



アパートに着いてしまった。


名残惜しいけど、ばいばいだ。


「あっ」


タクさんがちょっとわざとらしく声を出した。


「名前、聞いてなかったね。今さらだけど」


確かに!!


よくそれで半日近くいられたものだなと感心しつつ、


「今日から工学部1年の柴田美生(シバタミキ)です。タクさんは?」


タクさんが吹き出した。


「“タクさん”って知ってるじゃん」


あ…


しまった、いや、別に悪いことしてないけど、恥ずかしい…


真っ赤になって反論する。


「いや、あの、ちがくて、さっきのテンション高い人がそう言ってたから…」


今度は盛大に笑われた。


「テンション高い人って。まぁ確かにそうだけどさ…」


ひとしきり笑って、少し涙目のタクさんはやっと名乗った。


「俺は経済学部2年の小川卓(オガワスグル)。卓が“タク”って読めるから、通称タクって呼ばれてる。美生ちゃんもそう呼んで」

なるほど、だからタクさんなのか。


納得したところで、


タクさんが言った。


「じゃあ、俺はこれで。いつも部室でぐーたらしてるから、いつでも遊びきて。」


いつもぐーたらって。


おかしくって笑ってしまった。


「授業行かないんですか」


「いや、まぁ上手いことやってますので」

タクさんの顔が真っ赤だ。


…と思ったら、夕日が真っ赤だと気づく。


なんだ、夕日のせいか…


タクさんと今度こそばいばいして、アパートの鍵を開けた。


しんとした部屋が、まだ慣れないせいか、何だかさみしく感じた。