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 殺人現場に寺田充を殺害したものと思われる中邑靖志の指紋が残っていたのは事実だ。


 江美の指摘は鋭かった。


 中邑が事件に大きく関わっていたことは間違いない。


 すでに須山が警視庁に再捜査を依頼している。


 しばらくは資料を読み返す作業が続く。


 取り寄せた資料を片っ端から読みさえすれば、篠岡と中邑の共同正犯が成立するのは目に見えているのだから……。


 そしてずっと資料ばかり読むのに疲れていた。


 江美は専門の商法の方の弁護の依頼が来ているという。


 しかし商法の裁判の結果などは特に大規模な類のものじゃない限り、新聞の片隅に載るぐらいだ。


 十一月下旬のとある日、事務所にいた江美が言った。


「今から一緒に食事でもしない?」と。