暖かい風が絶えず吹き付けていた。


 南風である。


 四月も上旬になってしまえば、もうコートなど要らない。


 温度が上がっているので薄着で過ごせる。


 江美が一度僕を自宅マンションに誘ってきた。


「急にどうしたの?」
  

 そう問うと、彼女が、


「いいじゃない。たまには気を抜こうよ。いつも疲れてるでしょ?」


 と返す。


「ああ、まあな。旅行は楽しかったけど、やっぱし日本がいいよね」


「ええ。自宅でゆっくりするのもいいと思うわ。普段はずっと詰めっぱなしなんだし」


 笑顔を見せ合う。


 互いにある程度加齢していて、成人している以上、他人から何ら文句を言われることは