朝、目覚める瞬間が好きだ。

今日も蓮がいるってわかるから。



朝、目覚めたときにいる蓮の腕の中が好きだ。

蓮の温もりに安心するから。



当たり前になりがちな光景だけど、だからこそあたしは忘れたくない。

蓮と一緒に目覚める朝が好きなことを。



ゆっくりと目を開くと、目の前に広がる蓮の素肌。

暖かく硬い胸に擦り寄ると、規則正しい鼓動が聞こえる。



あぁ、そうだ。

昨日、あたしはこの胸に抱かれたんだ。

トクントクン、脈打つ鼓動が心地よく、あたしの心臓も同じようにリズムを刻む。

素肌同士が触れ合うのが照れくさいようで、でも気持ちがいい。

こんな安心感を抱くのはきっとこの先、蓮しかいないだろう。



「ん……」

「わっ」



急に腰を蓮の腕に引き寄せられて、上半身が後ろに仰け反って顔が蓮から少し離れた。



「蓮? 起きたの?」



そう問いかけるけれど、返事はない。

蓮の顔を覗き込めば、無防備に目は閉じられていて。



「寝てる……」



まるで子どもみたいに、少し口が開いた状態で寝ている。

なんだか胸の奥が熱くなって、蓮の黒髪を撫でた。