「先生は、俺の実の親のことを覚えていますか?」



先生は驚いたように目を見開く。

俺が実の親のことを聞いたことなんてなかったし、当たり前か。

少し目を細めて、先生は口を開いた。



「お母さんのことは、覚えているわ」

「どんな、人でしたか?」

「綺麗な人だったわ。自分にあなたを育てる力がないのがわかっていて、あなたの幸せを願ってあなたを手放した人たちよ」



それは、すごいことなのだろうか。

子どもの幸せを願って、自分たちには育てられないから手放したって……。

俺のことを本当に思っていて、そうしたのか……?

育てられないなら、産むなよ。

子どものことを思うなら、産むなよ……。



「そうですか……」



この施設で、いろんな子に出会った。

生まれてすぐに捨てられた子、親に虐待された子、育児放棄された子、親が亡くなった子……。

その中で俺はまだ、幸せな方なのだろうか……。

俺のことを考えてくれる実親で……幸せ、なのだろうか。