シンがわくわくしてる中言いづらいんだけど私はある事を教えてあげた。


『あのさ、どこから情報得たか知らないけどそういうのって大体が嘘だよ。鉄道とかの秘密管理ってしっかりしてるし、通る駅とかバレちゃったら人がいっぱい来ちゃうじゃん』

『えーそうなの?』


今のネット社会はありもしない事を簡単に書き込めちゃうから純粋な人は損だと思う。

シンは外の世界を知らないから分からないのも無理はないけど。

このまま夢を見させてあげる方が良かったかな。
でも叶わない夢を追い続けるほど酷な事はないでしょ?


『そっかぁ。見たかったのにな……』

シンはいつも暇さえあれば電車の本を見ている。
何度も何度も飽きないのかなってくらい。

乗りたい電車、見たい電車に夢を膨らませてシンは何度あの本のページをめくったんだろ?

それを考えると切ない。


電車なんていくらでも私が乗せてあげる。
ノスタルジア電車だって一緒に探してあげる。

そう言ってあげたいけど、そんな無責任な事言えないよ。


『あ、電車だっ』

ビルとビルの間から見えたのはシンが見たかったものじゃない。それでもシンはやっぱり目を輝かせていた。


『あんたって本当好きだね』

ガタンゴトンという電車の音は雑音の中でもここまで聞こえてくる。シンは一本の長い電車を目で追うように見ていた。


『電車ってさ』

音が聞こえなくなった代わりにシンの声が聞こえてきた。


『始発駅から終着駅まで色んな人を乗せて走るじゃない?………人間もそうだよね』

『え?』


シンが急に変な事を言うから思わず聞き返してしまった。