キミがいなくなるその日まで





『なにそれ、どうやったの?』


喧嘩してたはずなのに折り紙のおかげですっかり空気は変わっていた。


『ふふ、マイにはまだ動物は無理だから花の折り方を教えてあげる』

お母さんは優しい手つきで折り紙を折りはじめた


そういえば小さい頃はこうして漢字を教えてもらったり、料理を教えてもらったりしたっけ。

いつの間にかそういう時間はなくなったけど、
きっと今でも寄り添えばいくらだって出来る。


『……………あのさ……』


今だから言える事があるはず。

私はこんな性格だから言える時に言わないと。


『私、病気の事でお母さんのせいにした事なんて1度もないからね』


折り紙を折りながらの告白。

お母さんが責任を感じてる事は分かってる。本当はもっと早く言わなきゃいけないって分かってた。


『ムカついてイライラしてる時も薬の副作用で辛い時もお母さんのせいだって思った事ないから』


自分のお腹にいた時になにか良くない事をしてしまったんじゃないかとか、臨月まで仕事を続けていたせいじゃないかとか、お母さんがずっと悩んでいた事も知ってる。

誰のせいとかじゃない。

もし誰かのせいで病気になるならこの世の中病人だらけだよ。


『いつも1番近いお母さんに反発ばっかりしちゃうけど、そこだけは覚えていて欲しい』


お母さんの目からは涙がぽろぽろ流れていた。


『ありがとうマイ。………ありがとう』


この日私はアサガオを折れるようになった。

そしてお母さんとの絆も深まった気がする。