シンが居なくなった病室に私が居るわけにいかないから、とりあえず自分の部屋へと戻る事にした

扉を開けるとそこに居たのはお母さん。


『マイ、どこに行ってたの?』

あの倒れた日からお母さんは病院に来る回数が増えた。それと少し過保護気味になっている。


『302号室のシンの部屋』


あの時、シンとお母さんは顔を合わせたみたいだけど多分会話はほとんどしてないと思う。


『向こうだって親御さんが居るでしょ?あんまり頻繁に行ったら迷惑よ』

そう言えばシンのお母さんに会った事ないな。
シンは家族の話をあまりしないから。


『マイ聞いてるの?』

『聞いてるよ、うるさいな』


とっさに反発してしまった。でも普段の事まで縛られたら私は何を楽しみに過ごせばいいの?


『うるさいじゃないでしょ?マイの為に言ってるんじゃない。この前の事忘れたの?』


忘れる訳ないじゃん。

ちゃんと風間先生にも長い時間診てもらってるし薬も忘れずに飲んでるし、移植の事だってちゃんと考えてる。

私だってもう子供じゃない。


『だったらお母さんは私に1日中ベッドの上で過ごしてろって言うの?』

私の言葉にお母さんが黙った。


入院生活は退屈で嫌な事が多いからこそ、病気の自分を一瞬でも切り離せるそんな時間が欲しいんだよ。

診察室と病室だけを行き来する毎日じゃいつか何かが壊れてしまう。だからみんな同じ毎日の中で変化を見つけて、楽しい事を探してる。

それだけなのに………


私は大きなため息をつきながらベッドに入った。