私はその後、病室には戻らずそのまま屋上に向かった。悩んだり考え事をしたい時はここが1番いい。


─────バンッ!!

扉を開けると風が強いのか勢いよく開いてしまった。それと同時に屋上に声が響く。


『マイっ?もう出歩いて大丈夫なの?』


風の中、シンが慌てて駆け寄ってきた。

やっぱり居ると思った。むしろそう思ったから来たんだけどね。


『平気だよ、診察でも問題ないって』

シンの咳もいつの間にかよくなったみたいで以前の元気を取り戻した感じ。するとシンは巻いていたマフラーを私の首にかけた。


『ここは寒いから貸してあげる』

確かにパーカーだけじゃ寒いけどシンだって同じじゃん。それに病み上がりはお互い様なのに。


『風邪ひいても私のせいって言わないでよ』

『はは、言わないよ』


黒いマフラーにはシンの温もりが残っていて私は飛ばされないようにきつく巻いた。

私が安静にしていた間に外は冬の匂いがしてわずかに吐く息も白い。こうして時間と共に季節も変わっていくのだろう。


『ねぇ、シン』


私は静かに問いかけた。


『んー?なに?』

ふっとシンの泣き顔を思い出してしまった。シンもきっと人前で泣くのは苦手だろうからよっぽど心配してくれたんだと思う。


『怖かった?あの時』

なんとなく聞いてみたかった。

だってもしかしたら私はここに居なかったかもしれないから。


『うん、怖かった。マイが死んじゃったらどうしようってすごくすごく怖かったよ』

シンがギュッと手すりを握る。