長い、長い夢を見た。
どこか懐かしいあぜみちの景色。
夕焼けに染まるその道を小さい私が歩いている。
無数に飛び交う赤トンボを追いかけていつの間にか周りには私ひとりだけ。
急に寂しくなって大声を出した。
『おかあさん』
『おとうさん』
『カズキ』
何度も何度も呼んだけど返事が返ってこない。
綺麗だった夕焼けが急に恐いものになって、
涙がぽろぽろと流れる。
『怖い………怖いよ…』
早くここから抜け出したくて走って走って走りまくった。それなのにどんどん辺りは暗くなって自分の影がどこまでも追ってくる。
それはどんどん近付いてきて、ついに私は真っ黒な世界に落ちてしまった。
『おかあさん…おかあさんっ』
泣きながらもがく私に遠くから一筋の光りが。
『こっちだよ』
光の中で誰かが私に手招きをしている。
『早く、こっちこっち』
私は吸い込まれるように光りの主に手を伸ばした。
────その瞬間、
『ダメだよっ!』と大きな声が。
私はグイッと手を引っ張られ、次に目が覚めた時はいつものベッドの上だった。