『すごい眺めだなぁ』


私が最後に連れてきたのは屋上。

お父さんは子供に戻ったみたいに声をあげた。


屋上から見える景色は夕暮れの今の時間が1番綺麗だ。オレンジ色のビルに空を流れるほうき雲。

少し肌寒いけど顔に当たる夕日が暖かかった。


『でもマイが変わってなくて安心した』

お父さんはニコリと笑いかけた。

なんだかんだ心配してくれてるし、思えばお父さんはいつも私の味方をしてくれた気がする。


『…………ありがとう。いつも』

文化祭の時も今までだってお父さんが私を助けてくれた。


『マイにありがとうなんて言われたら泣いちゃうな』

『もう泣いてるでしょ』

お父さんは昔から涙もろい。人前で泣ける所は私に遺伝しなかったみたい。


『あ、そうだ。これ』

お父さんは涙を拭いて思い出したように何かを取り出した。それはとてもキラキラしていて丸いビー玉みたいな感じ。


『なにこれ……?』

『トンボ玉って言うんだ。綺麗だろ?』


私の手のひらに乗った丸いガラス玉。赤とピンクのマーブル模様で一輪の花の絵が描かれている。

それは今まで見た中で一番と思えるほど綺麗だった。


『見た瞬間、マイっぽいなと思って。他にも色んな種類のトンボ玉があったよ。気に入ったならいつか一緒に買いに行こう』


────未来の約束。

私は約束なんて絶対にしないけど本当にいつか行けたらいいと思った。