キミがいなくなるその日まで





その日、何度かシンの病室の前まで行ったけど扉に手をかける事はなかった。

だってその向こう側で苦しそうに咳をするシンの声が聞こえたから。


私が居たら横になる事は出来ないしきっと喋るのも辛いはず。そう思って自分の病室に帰ると何故か中から物音が聞こえた。

…………誰かいる?


中村さんが来る時間じゃないしお母さんも今は仕事中。

私は恐る恐るドアを開けるとそこに居たのは………



『お父さんっ?』


単身赴任で遠くに居るはずのお父さんが私の病室に居た。

顔を見るのは半年振りでメールのやり取りはしてるけどこっちに帰ってくるなんて一言も言ってなかった。


『マイ、久しぶりだな』

お父さんがこの病室に来るのは初めてで私がどんな生活をしてるかなんて知らない。


『来るなら来るって言ってよ。びっくりするじゃん』


なんだか自分の部屋にお父さんが居るって変な感じ。まぁ、部屋じゃなく病室なんだけど。


『あれ、お母さんには言ったんだけどな。それにしても思ったより快適そうで安心したよ。お父さんの部屋より良いかもな』

お父さんは久しぶりに会う娘に緊張してるのか良く喋る。


『どうせ汚い部屋に住んでるんでしょ。お父さん片付け出来ないもんね』

『はは、マイは相変わらず冷たいなぁ』


多分、私やカズキが片付け出来ないのはお父さんの遺伝子だよ。家に居る時はお母さんに甘えっぱなしでみんな何もしなかったもんね。