キミがいなくなるその日まで





なんとなく気持ちがそこから離れなくて病室に着く寸前に私は足を止めた。


『マイどうしたの?』

こんな顔見せられるのはシンだけ。お母さんやカズキには絶対見せたくない。

私はアイスの入った袋をギュッと握りしめた。



『…………シンは怖くないの?』


もしかしたら入院生活の長いシンは先生達と同じように沢山の人を見送ってきたのかもしれない。

でも次は自分かも、って誰でも思う事でしょ?


『マイはどうなの?』

珍しく質問に質問を返されてしまった。


私は多分どこかで覚悟してるけど実感がなくて、
死ぬってどういう事なのか分からない。

そもそも天国とか地獄とか生きてる人は行った事がないんだから分かる訳がない。


『そんな難しい事聞かないで』

『先に聞いてきたのはマイだよ?』


確かに。でもシンが答えてくれるのを私は知ってる。


『小さい頃は毎日怖かったよ。寝る前にこのまま目が覚めなかったらどうしようとか、死んだらどこに行くんだろうとか』

『………』


『でもそう思ってても何も変わらないからもう考えるのは止めちゃった。俺にとって大切なのは今だから。………それにマイに会えた。この病院に来て良かったって思えたのは初めてだよ』


あれ、なんかまた慰められちゃった。悔しいな。


『ほら早く戻ろ?アイスが溶けちゃうよ』


私はグッと感情を押さえて病室に戻った。その後三人で仲良くアイスを食べて病室からは笑い声が1日中響いていた。