キミがいなくなるその日まで





『───マイっ』


そんな声に振り向くとシンが後を追ってきていた。


『なに、カズキは?勉強中でしょ』

嬉しいはずなのにそれを素直に出せないあまのじゃく。


『今は一人で解いてるよ。マイ怒ってるの?』


『さぁね』

なんて曖昧な言い方をしながら売店に着いた。
暫くして隣からシンの笑い声が。


『アイス3つ買ってる』

『こ、これは私が全部食べるの』

『ふーん』

シンはたまに意地悪な顔をする。まるで手のひらで転がされてるみたい。

こんな風に下らない言い合いをしてるとここが病院だって忘れそうになる。

でも現実はそんなに甘くない。


『あ………』

シンが何かに気付いて足を止めた。目線を追ってみると病院の入り口に数人の先生や看護師が集まっていた。

そして玄関先に停まったのは黒くて長い車。



『………誰かまた亡くなったんだね』


病院で人が死ぬのは日常茶飯事。そして亡くなった患者は霊柩車に乗って自宅へと帰る。

もちろん先生達は悲しい顔をするけど、これも仕事だから涙は見せない。


もし私が死んだら風間先生や中村さんは泣くかな?それとも仕事として気丈に見送る?

そんな考えても仕方がない事を思った。