先生との話し合いは思ったより短かった。

内容はレシピエントという移植患者に私の名前を登録するという事。そしてドナーが見つかる確率と心臓適合の基準についての説明。

後はドナーが見つかった場合の手術までの期間とリスク。


先生が話してくれた事は全て私自身把握している事だった。

だって自分で調べた時にインターネットに書いてあったし。一応基本的な事は頭に入ってるつもり


でも一つだけ、

一つだけ私の中にない知識がある。


『心臓移植を受けなかったら私は後どのくらいで死ぬの?』


一瞬、診察室がシーンと静まり返った。

どのくらい生きられるか、そう聞こう思ったのに

なぜか死という言葉が先に出た。


先生は動揺した素振りも見せず医師としてはっきりと答えた。


『4年以内』

誤魔化したり少しでも嘘を言えばやっぱり移植はしないと言うつもりだった。

だけどその目に嘘はなく、真実なんだと分かった。


『そっか』

私は驚く事もせず、その現実を静かに受け入れた。その代わり隣のお母さんの肩が微かに震えていた。


普段から泣き虫なくせに、今は必死に涙を堪えてるみたい。

私はそれに気付かない振りをするしかなかった。