それから時間は過ぎて、お母さんが言っていた通り弟のカズキが病院にきた。


『お姉ちゃんっ!』


元気よく私の部屋に入ってきたカズキは暫く見ない内に少し身長が伸びたみたい。と言っても私から見ればまだまだチビだけど。


『一人で来たの?迷わなかった?』


こんな私でも一応姉らしい一面はある。


『迷う訳ないじゃん!電車だってもう一人で乗れるし』


カズキが最近ハマっているのはサッカー。今日も友達とやってきたのか手には汚れたサッカーボールを持っていた。

小学校のクラブも迷わずサッカークラブに入って、毎日洋服を汚してくるとお母さんが言ってたっけ。


『少しはサッカー上手くなったの?』


私は事前に買っておいたリンゴジュースをカズキに渡した。


『当たり前じゃん!今度試合にも出るんだ!すごいっしょ』


どこか自慢気な弟。私は小学校の時も中学校の時も一切運動は出来なかった。

だから今まで体を動かして汗を流した事はない。

弟は生意気だけど可愛いし、私の分まで楽しい事をたくさんして欲しいって思ってる。

『あ、そうだ。これ』

カズキが思い出したようにランドセルから何かを取りだそうとしていた。


黒いランドセルの中はグチャグチャのプリントとか出し忘れた体操着とかが見えた。

こういうずぼらな所は私と似てるかも。