『それってダメな事なの?』
するとシンがやっと口を開く。
シンの質問をもう一度、自分に投げ掛けてみた。
ううん、ダメじゃない、
ダメじゃないね。
私が言いたかった事はこんなことじゃない。
本当に言いたかったのは………
『もし今、私の心臓と新しい心臓が入れ替わって健康な体になったらこんな風に病院で過ごした事も、生と死の狭間に居た事もあんたに会えた事も
経験っていう二文字で終わっちゃうのかな?』
本当は今すぐこんな生活抜け出したいの。
でも全て忘れて元の生活に戻るのが怖いんだよ。
だってこんな風に悩んだり、泣きそうになったり、きっと今あるこの感情も元気になったら私は忘れるよ。
早く抜け出したいはずなのにシンはここにしか居ない気がして、
『俺はマイじゃないから分からないよ』
シンが珍しく私を突き放した。
でもその後にまた優しい言葉で私を包む。
『でも俺は何があってもマイの事だけは忘れられないよ』
───何があっても。
普通ならなんて事ない言葉なのに、
この場所では笑えない言葉だね。
ねぇ、これから私達には何があるんだろう。
今は想像も出来ないよ。



