『ううん、全然大丈夫だけど……。マイが来てくれると思ってなかったからちょっとびっくりしちゃった』


シンはそう言ってベッドから出ようとしたから私は「そのままでいい」と手で合図をした。

するとシンがクスリと笑い、手招きをする。


『それならマイがこっちに来てよ』


私はまだ病室には入ってなくて廊下と部屋のギリギリのラインで立ち止まったまま。


シンの言葉を聞いて私は一歩前に出てドアを閉めた。

ガラガラという音が聞こえなくなった頃には私とシンの二人だけの空間が出来ていた。


シンの病室は私と同じ個室。

部屋はとても綺麗にしてあって、本棚には沢山の本が並べられていた。


『そんなに良く見ないでよ。別にマイの部屋と同じでしょ?』

その視線が気になったのかシンは苦笑いを浮かべていた。


確かにホテルじゃないんだから病室なんてみんな同じだ。でも過ごしやすいように工夫されてるし入院した時のままの私とは違う。

それにこの部屋はシンの匂いがする。


『……』


こんなに静かだと呼吸の音まで聞こえてしまいそうだ。

シンと二人きりになるのは初めてじゃないのに、
何故か今日は少し変な感じ。


『マイ、もっとこっちにおいで』


私はゆっくりとシンの元へと歩み寄った。