それから診察や諸々の検査を終えて、私は廊下をウロウロしていた。
普段あまり出歩く事はしないし行くとしたら飲み物を買いに行くか屋上に行くぐらい。
元々、病室が好きな訳じゃないけど出歩くと他の患者の面会人が居たり、外来患者が居たりするから嫌だった。
周りの目を気にするタイプじゃないけど“あの子若いのに何の病気なのかしら?”なんて言われた事が多々あるから。
そんな私が今行き慣れていない階でキョロキョロしている。
私は病室の番号を確認しながら、ある部屋の前で立ち止まった。
『何やってるんだろ?私……』
急に我に返り引き返そうとしたけど、ポケットに入ってる折り紙を思い出して引き止(とど)まった。
『……』
少し考えた後に、目の前の病室のドアへと手が伸びる。
病室の番号は302号室。
恐る恐るドアを開けると窓から射し込む太陽の光に一瞬目が眩む。
光の中でこちらを見る人影がうっすら瞳に映った。
『………マイ?』
最初に言葉を発したのは私ではない。
目が慣れてきた頃、ベッドの上で本を読むシンの姿が目に入った。
『どうしたの?ノックがなかったから誰かと思ったよ』
シンは本をパタリと閉じてそれを机の上に置いた。
『…あ、ごめん。忘れた』
ノックなんて全然頭に入ってなかった。そもそも誰かの病室に入るのも初めてだし。



