キミがいなくなるその日まで





『マイ、ありがとう』


体育座りをしている私にそんな言葉が聞こえてきた。シンはジッと海を見つめてさざ波に耳をすませている。


『マイが居なかったら一生見れなかったかもしれない』


ズキンと切ない痛みが走る。


あれからね、シンの病気について沢山調べたよ。
本も読んだしインターネットで調べたし先生達にも聞いたよ。

でも必ず最後にたどり着くのが心臓移植だった。


悔しくて、悔しくてまた調べるんだけど結果は同じ。どんなに探してもシンを救う方法がどこにもないの。

それはきっとシンだって分かってる。


諦めてない、望みは捨ててなくても、
どうにもならない事が世の中にはあって

どうしてそれが70億人いる人の中でシンに襲いかかってくるんだろう。


やっぱり神様なんていない。

もし居たらシンを連れていったりしないから。


『…………ねぇ、シン』


冷たい風で髪の毛が揺れる中、私は海を見つめた。


今から言う言葉をもしかしたら私はずっと言ってしまいたかったのかもしれない。

心の奥底で眠っていたけれど、どうしても消えてくれなかったこの言葉。



『死ぬのを待つより、ここで選んだ方が楽だと思わない?』


目の前には綺麗な海。水面はキラキラしていてまるでダイヤモンドみたい。

あんな病院のベッドの上で死ぬくらいなら、
いっそこのまま………………