「愛弓、調子に乗ってんじゃねえよ。」


藤本が愛弓に凄んだ。



藤本は、僕の知ってる藤本では、なかった。



優しい兄貴分、或いは陰で次郎を支える頼りになるが常に嫌な顔を1度もしなかった男。



今、僕の前に居る藤本は、まるで違う藤本だった。



ヤクザの藤本だろうか?



これが、本当の藤本だろうか?



「藤本、愛弓ちゃんにグダグダ言ってないでお前が1番気にいらないのは、俺だろう。

俺に何か言えよ。」


次郎が落ち着いた声で藤本に話し掛けた。



「次郎、お前に言いたい事は、山ほどあるがその前に携帯で話したようにしたいんだが、どうかな?」



藤本は、次郎を睨みながら話した。



「無茶苦茶な要求だよな。

なぜ俺と勝負しないんだ?」



「次郎、お前と勝負しても勝てないからだよ。

佐竹と2人がかりでも勝てんよ。

それに、剣の会のナンバー2と実質的なナンバー3と勝負して悪いのか?

ナンバー2とナンバー3ってそのくらいの事が出来て当たり前だろう。」



藤本が言ってるのは僕と愛弓の事らしかった。



「藤本、お前の提案をきちんと2人に話せよ。

それに、なぜ裏切ったかもきちんと話せ。

OKかは、それからだろう。」



次郎は、落ち着いていた。