『あ、もしもし?
優奈姉?』
その日の夜、翔から電話があった。
隣に住んでるのに
今更電話ってゆうのも少し恥ずかしくて…
優奈が躊躇しながら口を開く。
「…うん」
『今日、一緒に帰れなかったからちゃんと家についてるか心配になってさ。
電話しちゃった(笑)』
大山の隣を歩いていた翔からは想像もできないような明るい声に
優奈が思わず表情を緩める。
「隣なんだし、部屋に電気ついてるの見えるでしょ(笑)」
優奈と翔の部屋は向かい合っていて
窓を開ければお互いの部屋がよく見えた。
『うん。
今、見てるところ。
…優奈姉カーテン開けて?』
「……」
翔の言葉に
優奈がケータイを切る。
そして東側のカーテンを開けた。
5メートルほど先に笑顔の翔を確認してから窓を開ける。
「寒いよ」
窓を開けた途端に入り込んでいた冷やりとした空気に
優奈が体を抱き締めるようにして縮こまらせた。
「優奈姉、空見てみなよ。
すっげぇキレイだよ」
翔の言葉に優奈が空を見上げると
そこには言われたとおりキレイな星空が広がっていて…
思わず息を止めるほどだった。
「…本当だね」
「でしょ?」
満足気に笑う翔に笑顔を向けた後、
また空を見上げて…
その視線を再び翔へと向ける。
翔はまだ空を見上げていて
優奈の視線には気付きそうもなかった。
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