校舎を飛び出した優奈の目に

さっき見た2人の後姿がようやく映った。



でも…

声を掛ける事なく優奈の足が止まる。



思わず走り出してしまったものの…

何を言いたいのか
何をしたいのか分からなかった。




別に翔に彼女ができたのは喜ばしい事で…

後でひやかしてやろうとかそんな事を思っていた。



だけど…


『飽きたら捨てる』

『殴られた人もいるとかいないとか…』










だからって…


あたしが心配して口出ししてどうするんだろ…


きっと本当の姉弟でもそこまで干渉しない。








ふと地面に向けていた視線を前を歩く2人に移すと
楽しそうに話す大山の隣に

いつもとは違うクールな表情をする翔の姿があって…





彼女の隣ではそうゆう顔するんだ…


知らなかった…


いつの間にかそんな顔もできるようになったんだね。





大山に呼びかけられて
翔がやっと小さく笑った。


通学路には下校する生徒で溢れていて
2人の姿も人混みに紛れて見えなくなっていく。






翔が選んだんなら…


悪い子じゃないんだよ。



昔からいざって時はすごく慎重だったもん。



だから…





大丈夫。





翔が選んだんなら大丈夫…




翔を…


傷つけないでね…?





もう見えなくなった2人を

優奈が見つめていた。



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