「優奈姉、今日は帰り別々でもいい?」
放課後、
いつもどおり2年の教室にきた翔が少し気まずそうに言った。
「うん、いいよ。
ってゆうか約束してるわけじゃないんだから気使わなくていいよ(笑)」
笑いながら言う優奈に翔が少しだけ笑顔を作って謝る。
「…ごめんな」
そう言ってちょっとだけ寂しそうに笑った翔が気になって…
歩き出した翔の後姿に声を掛けようとした時…
大山の姿が目に映った。
「翔、あたし駅の方に行きたいな」
「あぁ、じゃあちょっと遠回りして帰るか」
仲良さそうに見える2人はまるでカップルで…
…よかったじゃん。
彼女できたんだね…
そんな事を思いながら2人の背中から目を離した時
「ほっといていいの?!
翔くんが大山の毒牙にやられるよ!」
教室から出てきた美里に勢いよく怒鳴りつけられた。
美里のあまりの形相に
優奈が苦笑いをこぼす。
「毒牙って(笑)
別に翔なら大丈夫だよ。
そんな変な子と付き合ったりしないって」
「甘いよ…
大山は最初は誰にでもいい子なんだよ。
で、自分が飽きたら捨てるの。
兄貴がいるんだけど
その兄貴がちょっと裏で顔きく人らしくて…
殴られた人もいるとかいないとか…」
美里の言葉に優奈の顔色が変わった。
少し真剣な表情を浮かべて…
ゆっくりと口を開く。
「だって…
でも大山さんは好きだから付き合うんでしょ…?」
心配そうな表情をする優奈に気付いた美里が
少し優奈を見てから首を傾げた。
「…さぁね。
それすら微妙だよ。
ステイタスなんじゃん?
あたしはモテます~みたいな…
あっ、優奈?!」
考えるよりも先に
優奈の足が走り出していた。
生徒で賑わう廊下に
もう2人の姿は見当たらなかった。
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