【短編】微糖チョコレート


優奈が隣にいないだけで
全てがどうでもよくて…


そんな自分に少し呆れる。



「ねぇ!翔ってば!」


何度目だか分からない大山の呼びかけに
翔がやっと気付いて

誤魔化すように小さく笑顔を作る。



「も~…」


そう膨れる大山を見ながらも
さっきの優奈の言葉が耳に残っていた。




『約束してるわけじゃないんだし』



そんな残酷な言葉を平気な顔をして言う優奈にとっては

やっぱり自分が弟以外の何者でもないんだと言う事が思い知らされて…




いつも優奈と一緒に通る校門にすら腹が立った。












でも…



「…大山さんと付き合ってるの?」


優奈の口から聞くこともないと思ってた言葉を聞いた時…


翔の中で何かが動き出した。



「…なんで?」


わざと曖昧に誤魔化した。




気にして欲しかったから。











どうせ…


手に入らないなら…





こんな関係苦しいだけ。






オレのものにならないなら





オレの事嫌いになってよ。






『騙すなんて最低っ!』


そう言って怒れよ。







好きになってもらえないなら…







こんな関係いらない。









いつか優奈を他の男がさらって行くのを見る自信なんか



オレにはないから…













いっその事嫌いになって…












オレに笑いかけないで…

















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