「マジで?!」
その場一体を支配する緊張を吹き消すかのような翔の声に
優奈が思わず顔を上げた。
てっきり真剣な表情を浮かべていると思っていた翔は
いつものやんちゃな笑顔をしていて…
「今の絶対に取り消しなしだからな?!」
少し戸惑った様子で優奈が頷いた。
「これでもうオレのだからなっ」
そう言いながら翔が優奈を抱き締めてきて…
優奈が翔の腕の中で赤い顔をしながら口を開く。
「…てゆうか…
だって…大山さんは…?」
「大山とは付き合ってないよ。
ただ一回遊んだだけ。
…優奈姉振り向かせるために適当に騙してただけ(笑)」
翔の言葉に優奈が言葉を失って…
安堵から体の力が抜けていく。
「優奈姉?」
「もう~…最悪だよ。
翔のばか…」
今にも崩れ落ちそうな優奈を翔が抱き締めながら支える。
その腕の強さは…
厚い胸は…
やっぱり優奈の知っている翔ではなかった。
でも…
不思議と落ち着く場所に
優奈が顔をうずめる。
「ばか」
「うん」
「ひどい」
「ごめん(笑)」
「チョコ返して」
「…優奈姉、甘いのしか食べられないじゃん」
「……」
大人しくなった優奈に笑いながら
翔が優奈の頭を撫でる。
誰もいない裏庭の雑草が
穏やかな風で揺れる。
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