「…じゃあオレ戻るね」
そう言って背中を向ける翔から優奈が目を逸らす。
戻るって…
どこに?
教室に?
それとも…
大山さんのところ…?
「…優奈姉?」
翔が不思議そうに振り返って…
「…あ」
自分の手が翔の制服を掴んでいる事に気がついた。
「…まだ何かあんの?」
振ってきた翔の言葉はやっぱり少し冷たくて…
優奈が口をキュッと結ぶ。
「…大山さんのところに行くの?」
優奈が俯きがちにポツリと言った言葉に
翔がしばらく黙って…
そして…
「…優奈姉、やきもち?」
翔の言葉に…
優奈の胸が騒がしく動き出す。
もう自分のものではないような心臓の動きに
優奈が息を飲む。
緊張のあまり言葉にする事なんかとてもできなくて…
コクンと小さく頷くのがやっとだった。
翔の顔を見るのが恐かった。
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