なんとなく人目のある場所では渡しづらくて
翔を連れて裏庭にきた。
あまり使用されることのない裏庭は雑草が好き放題に伸びていて
少し歩き難い。
いつもなら話しかけてくる翔が何も話さない事に
不安になりながら優奈が翔を見つめた。
今更チョコ1つ渡すだけにこんなに緊張している自分に戸惑いながら
優奈がキレイに包まれたチョコを差し出す。
「…これ」
翔は少し躊躇してから
優奈の手からチョコを抜き取って…
小さく笑った。
「…サンキュ」
その笑顔に…
急に不安が優奈を襲ってきた。
急にそっけなくなってしまった態度も
急に変わってしまった笑顔も…
離れていく翔を表しているようで…
今になって自分の気持の大きさに気がついた。
あたしが翔を守ってたんじゃない。
あたしが
翔に守られてきたんだ…
後ろを追いかけてくる翔に
あたしが安心してたんだ。
振り返ればいつも笑顔をくれる翔に
『優奈姉~』
そう言っていつでも笑ってくれる翔が…
好きだったんだ…
ずっとずっと…
好きだったんだ―――…
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