「優奈姉~、一緒に帰ろ~」
2年1組の掃除中の教室に
低すぎないよく通る声が響いた。
教室掃除をする数人の視線を集めたのは…
「翔くん、またお迎え?(笑)」
優奈の隣に住む翔だった。
毎日の光景に優奈が小さくため息をつきながら翔の元に向かう。
クラスメイトもいつもの事に慣れたのか
暖かい表情で翔を見た後、
また掃除に取り掛かる。
「翔、もういい加減高校生なんだから1人で帰りなよ。
翔が教室くると目立って恥ずかしい」
少し頬を膨らまして言う優奈に翔が目を細める。
「だって優奈に悪い虫がついたらやだからね」
そう笑う翔の顔はまだあどけなくて…
やんちゃな雰囲気を作り出す。
小さい頃から見てきた笑顔も
自分の後ろを付いて回るところも
高校生になった今でも全然変わっていなくて…
伸びた身長と低くなった声に違和感すら覚える。
優奈の中での翔は
小学生の頃のイメージのまま止まっていたから…
「…あたしにはそんなのつかないっていっつも言ってるじゃん。
つくとしたら翔の方でしょ?」
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