夕焼けも沈みかけた頃、
優奈はようやく校舎を後にした。
翔に知らせるべきか…
黙っておくべきか…
考えても考えても答えにたどり着かない。
ただでさえ
気付きたくなかった自分の気持ちに気付いて冷静さを失っていた優奈には
正しい答えを出す余裕なんてなかった。
どうしても自分の気持ちを一番に考えてしまって…
翔のためにはどっちがいいのか、
それだけを考えられない。
自分が翔と一緒にいられるためにはどっちがいいのか…
いつの間にか考え事が入れ替わっていることに気付いてため息を漏らした。
「最悪…」
自分勝手な自分にそう呟いて俯くと…
急に目の前に影が落ちた。
視線の先に見慣れたスニーカーが映って顔をあげると…
「遅いし(笑)」
ふてくされながら笑う翔の姿があった。
「…待ってたの?」
驚きを隠せない優奈に翔がため息混じりに頷いた。
「だって1人じゃ危ないじゃん。
さ、帰ろ~」
そう言って笑う翔に
優奈の胸が痛み出す。
…黙ってていいわけない。
黙ってたっていつかは分かる。
それなら…
今…
「…翔」
「ん~?」
前を歩く翔の後ろを歩きながら
優奈が目を伏せる。
通学路に植えられた桜の木はもう葉っぱを落としていて
寂しさを誘ってくる。
冷たい空気が喉に詰まって咳き込みそうだった。
「…大山さん、
今日他の男の子と歩いてたよ」
前を歩く翔の足が
止まった。
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