何も用事もないのに学校にいるのは退屈で…
頼みの綱の美里も電車の時間があると足早に帰ってしまった。
誰もいなくなった教室からグランドを眺めていた時…
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「中田くん、今日は一緒に帰れる?」
「あぁ、あんまり千夏をほっとくと浮気されちゃいそうだしな(笑)」
「あ、ひどいっ
あたし今まで浮気だけはしたことないんだから~
中田くん一筋なんだからね?」
優奈が振り返ると
廊下を通り過ぎる大山の姿があって…
優奈がその後ろを追いかけた。
「…大山さんっ」
初めて話す大山に少し戸惑いながらも
声を掛けた。
優奈の声に
中田の腕に手を絡めた大山が振り返る。
「なにか?」
訳がわからない様子で首を傾げる大山に
優奈がゆっくりと口を開く。
心臓が…
ドキドキと早いリズムで鼓動を刻む。
「…翔がいるのになんでその人といるの?」
震える声を必死に出した優奈に
大山が難しい顔を浮かべる。
「…翔はただの友達ですけど?
あたし今は中田くんと付き合ってるし」
言葉を失った優奈を大山が怪訝そうに見つめて…
「いこ」
中田を促して歩き出した。
『男を手玉にとって』
『ステイタスなんじゃん?』
その時はたいして気にしていなかった美里の言葉が一気に頭に蘇る。
翔…
騙されてるよ…
悔しいような
悲しいような…
なんとも言えない気持ちになって…
優奈が唇をかみしめた。
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