「やっぱり翔、大山さんと付き合ってるんだって」


わざと何気なく言った優奈の言葉に美里ががっくりと肩を落とした。


「翔くんは大山の外見になんかごまかされないと思ってたのにぃ…


ってゆうか…」


急に視線を上げて見つめてきた美里に

優奈が首を傾げる。


「なに?」


「…翔くんは優奈が好きなんだと思ってた」


呆然としながら言う美里に優奈が言葉を失って…

そして呆れたように笑った。


「そんな訳ないじゃん(笑)

翔があたしをそんな風には思ってないよ」


昼休みの教室はとても賑やかで
2人の会話を流していく。


「えぇ!!

大山次は翔くんなの?!」


「マジ?!

あの女調子付いてるよねっ

翔くんはあたし達の癒しなのに〜…」


他のグループでも翔と大山の事が話題になっていて
騒ぎがどんどん大きくなっていく。




『翔はあたしをそんな風に思ってないよ』


自分で言った言葉がやけに耳障りだった。



気をつけていないと沈んでいってしまう表情を
必死に保つ。



「さっすが翔くん。

みんなのお気に入りなんだね」


美里もそんな事を言いながら遠巻きに騒ぐグループを見つめていて…


そのおかげで美里には気付かれずに済んだ。



努力も虚しく影を落としてしまった表情に…





「でも悔しいけど似合ってるよね…」


「大山顔もスタイルも抜群だしね。

あれには勝てないよ」


「今まで大山が引っ掛けてきたどの男より
翔くんのがカッコいいし、

今回は大山も本気だったりして」


「でもどっちから告白したのかなぁ」






昼休みの教室には

そんな会話ばかりが飛び交っていて…





聞きたくないのに

体が動かなかった。





自分がなんでこんなに嫌な気持ちなのか

何がこんなにショックなのか…





ただただ


ズキズキと痛み出した胸を押さえていた。




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