「優奈姉~」


翌日、何事もなかったかのように清々しい笑顔で話しかけてきた翔とは逆に

昨日よく眠れなかった優奈が不機嫌そうな表情を浮かべて振り返った。


「なに、その顔(笑)

可愛くないよ?」


優奈の頬をぷにぷにと触りながら言う翔の手を
優奈が軽く振り払う。




昨日眠れなかったのは…

認めたくなかったが、翔が原因だった。



急に見せられた男の顔が…

真剣な声が…


頭から離れなかった。



長い時間、星空を眺めていたせいか
少し風邪っぽくて…

気分だけじゃなく体調までもが悪かった。



「風邪っぽいだけ。

…ってゆうか、すぐ触んないで。


…彼女が誤解するよ」


すたすたと歩き出した優奈の言葉に

少ししてから翔が返事をする。



「…そうだな」



半分…


半分以上、否定する事を望みながら言った言葉は
いとも簡単に肯定されてしまって…



わざと探る様に言った言葉を今更後悔した。






急に翔が大人になったような…


急に自分から離れていくような…


不思議な寂しさが優奈を包み込む。






弟がいる女の子はみんなこんな思いをするのかな…


子離れできない親ってこんな気分なのか…




翔が

自分から離れていく事がどうしょうもなく寂しくて…




でも


止める権利なんてなかったから…





「…彼女は大切にしなくちゃだめだよ」



そう言った。






少し…


胸が痛かった。





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