「手で掬えば儚く消える、季節外れの悲しい雪。
僕の恋のイメージだよ。」
あまり鋭い方ではないけれど、彼の顔を見て何も分からないほど鈍いつもりもない。
―――彼は確かに誰かを想っている。
叶うことのない想いをただ抱えて。
彼の想い人は『山内さん』ではない。
「山内さんのことは…大切でしたか?」
「…どう言えばいいのか、僕もまだよく分かっていないけれど。
それでも大切だと言えるくらいに大切だったよ。」
彼が一瞬言い淀んだ。
迷いがあったわけではないような気がする。
「自分のためにあんなに喜怒哀楽する人間はいなかったよ、僕の人生の中で。
かえでは僕にとってとても新鮮で、新しい世界だった。」
『だった』
その言葉が酷く痛い。山内さんがもう遠い。
「僕は大切に想う人を大切にできない。
だから君には、大切な人を大切にしてほしいと思うよ。」
彼らしからぬ強さを携え、そう言った。
もうこれ以上何も言えない、そんな気がした。
彼の抱えているものは俺には大きすぎる。
それに誰かと共有できるものでもなさそうだと直感的に思う。
だったら今俺が言うべきは…。
僕の恋のイメージだよ。」
あまり鋭い方ではないけれど、彼の顔を見て何も分からないほど鈍いつもりもない。
―――彼は確かに誰かを想っている。
叶うことのない想いをただ抱えて。
彼の想い人は『山内さん』ではない。
「山内さんのことは…大切でしたか?」
「…どう言えばいいのか、僕もまだよく分かっていないけれど。
それでも大切だと言えるくらいに大切だったよ。」
彼が一瞬言い淀んだ。
迷いがあったわけではないような気がする。
「自分のためにあんなに喜怒哀楽する人間はいなかったよ、僕の人生の中で。
かえでは僕にとってとても新鮮で、新しい世界だった。」
『だった』
その言葉が酷く痛い。山内さんがもう遠い。
「僕は大切に想う人を大切にできない。
だから君には、大切な人を大切にしてほしいと思うよ。」
彼らしからぬ強さを携え、そう言った。
もうこれ以上何も言えない、そんな気がした。
彼の抱えているものは俺には大きすぎる。
それに誰かと共有できるものでもなさそうだと直感的に思う。
だったら今俺が言うべきは…。



