そんな話をして数分後。
そろそろ帰る時間が来た。

「じゃあ私帰るね」

「んー、またね」

玄関まで見送ってくれた頼が、憂いに満ちているんだかいないんだかよくわからない顔で平然と言う。

「奈里ちゃん。やっぱり俺死にたいよ」

「はぁ…?」

そう言うと彼はまた薄く微笑む。


死への恐怖なんて微塵も感じさせない笑顔で。


「何年経っても、この気持ちは変わらないと思う」

まるで好きな人に告白するようなセリフを吐いて、彼は私に手を振った。

その時の私に手を振り返す余裕なんて、無かった。