「俺を止める時、奈里ちゃんは一度だって“自殺がダメ”とは言わないんだ」

頭の中の記憶を探って、私は少し裏返った声を上げる。

「…嘘。言ったよ」

絶対言った、言ったに決まってる。
きっと頼が覚えていないだけだ。


「いいや、言ってない」


やめときなって。

またそんなこと言ってるの?

お願いだから、私に黙って死んだりしないでね。


あ、あ、そんな、嘘だ。

だってそれは言わなくちゃいけないはずの言葉で、頼の言葉を聞けば誰しも必ず口にするはずの言葉で。


「そうやって俺を誤魔化してきたつもりかもしれないけど…」


――無駄だよ?

耳元で甘いささやきが、近づいては遠のく。