都合のいい程青い空なんてどこにも無くて、広がるのは鈍い青灰色の曇り空。

背中から温もりを伝える彼が口を開く。

「びっくりしたよ、いきなり電話切るから…。…あぁ、下に落としちゃったんだね」

眼下には、5階の高さから落っことして粉々になった私のケータイ。

「落としたんじゃない、わざと壊した」


自分もああなるのかと思うと、うれしくてうれしくて。

「いつから、気付いてたの」

「うん?最初からだよ」


最初と言うと、初めて会った時からか。

あの時頼の言葉に引いて友情なんて築かなければ、私は今頃死ねていたのかな。

「だってそうだろ?俺の鬱っぷりを見て平気でいられるなんて余程屈強な精神を持ってるか、俺と同類かその二つだ。
そして、奈里ちゃんはどう考えても前者には見えなかった」


それにね、と薄い唇が言葉を繋ぐ。
柔らかい声が、研いだ刃物のようにぎらりと光った。