恐る恐る奈里ちゃんの顔色を窺うと、彼女はその口からあの言葉を吐きだしたとは思えないぐらいふんわりと笑った。

「…へへ、ありがと頼。じゃーね、また明日」

「あ…」


呼び止めるより先に、彼女は走り去ってしまった。

背を向ける直前にもごもごと何か言った気がしたけど、うまく聞き取れなかった。


様子がおかしいのは全部あの人への憎悪のせいだと思っていた。

ゆっくり歩きながら家に帰って部屋に入って、窓の外を見るまで。
彼女が家とは逆方向に帰っていった理由なんて考えもしなかった。


さっき奈里ちゃんは、なんて言った?