奈里ちゃんの家へ向かう道を息を切らしながら走っていくと、見慣れた後ろ姿が見えた。
安堵の息を吐いたのも束の間、イライラの根源の姿も視界に入る。
最悪だ。
俺はこれを避けたくて、自分と一緒にいたらまた彼女と鉢合わせてしまうかもしれないと思って奈里ちゃんを突き放したのに。
一人で帰らせたらこんな事態になってしまうと、どうして想像できなかったんだろう。
「奈里ちゃんっ」
肩で息をしながら2人の間に入ると、彼女が不愉快そうに眉をひそめた。
まるで獲物を捕らえようとしていた瞬間を邪魔された時の、肉食獣みたいだった。
「頼…」
地面に座り込んだ奈里ちゃんの弱々しい声が頼りなく耳に届く。
ごめんね、泣かせたかったわけじゃないんだ。
むしろ、君のことは絶対に泣かせちゃいけないと思ってた。